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私の湿潤療法体験
最近の外傷治療において急速に認知されつつある湿潤療法(うるおい療法)を自宅で実行してみた時の話です。
と言っても大したことないです。ちょっとした切り傷とかそんな程度。
粉瘤(アテローム)切開創で湿潤療法を実行
多分2〜3年前頃だと思いますが、私の背中に瘤(こぶ)ができました。
気が付いた時には直径4cmぐらいの山がぽっこり盛り上がっていて、触ると中の固まりがぐりぐり動きます。
何が悲しくてこんなものができるのか、と自分の体が情けなくなりましたが、以前にも顎のあたりに瘤ができて病院で切ってもらったことがあるので、別に驚きはしません。痛みも無いのでそのままほったらかしです。
ところが、2005年の夏にいきなり痛み始めました。
それまで固かった瘤がぶよぶよになって全体的に熱を帯びていて、触っただけでビッと痛みが走ります。顎の瘤を切開した時も同じような状態だったことを思い出しました。
顎の時は、確か“麻酔しても効かないんだよねー”とお医者様にいきなりメスで斬りつけ、いや切開されて、もの凄く痛かった記憶があります。
できれば切らずに済ませたい。
済ませたいのですが、固かった中身が溶けて周囲が発熱していれば化膿しているに決まっています。放っておいて治るのかどうかは分かりませんが、膿を出してしまえば痛みが消えるのは顎の時に経験済みです。
覚悟を決めて皮膚科へ行きました。
皮膚科で診察
私の背中を一目見た先生。
「あーこれはアテローム、粉瘤という腫瘍なんですが、ここまで悪化させてしまっては切るしかありませんね。軽く考えている方も多いのですが、江戸時代の頃はこれで無くなった人も随分いるんですよ」
先生は丁寧に説明してくれましたが、ご存じない方のために粉瘤についての詳細を。
『日本皮膚科学会:アテローム(粉瘤)』
実は化膿していなければ、局所麻酔をかけてからディスポーザブルパンチという器具で割と簡単に粉瘤を切除できるようです。
「切開すると最低でも2週間、場合によっては3週間はお風呂に入れませんので覚悟して下さいね」
うそお!傷が塞がるのにそんなにかかるの?
「夏は辛いんですよねえ。では、こちらで切りますからね」
私の顔が引きつったのを見てとったのか、先生は気の毒そうに言いながら、処置室へ案内してくれました。
「麻酔しても効きませんので、そのまま切開します。辛いでしょうが我慢して下さい」
もう覚悟はしていますので、はいはいどうぞ、とTシャツを脱いで診察台にうつ伏せになりました。痛いに決まっているので、体中に力を入れて身構えます。
「それじゃ始めますよ」
背中を押さえつけられてメスが入りました。
粉瘤切開
あまり思い出したくはないのですが、痛かったです。
どれぐらい痛いかというと、触るだけで激痛が走るところを麻酔無しで切り開いて膿を絞り出すぐらいの痛みです。ベタですが事実です。
痛すぎて、切っているのか膿を押し出しているのか区別がつきません。息もできないぐらい。
「情け容赦ないようで申し訳ないんですが、きちんと膿を出さないといけないので、我慢して下さいね」
物腰が低い先生で、本当に申し訳なさそうにおっしゃるのですが、嘘はついていませんでした。言葉そのまま情け容赦なし。
「膿さえ出れば楽になりますからね。もう少し我慢して下さい。膿が溜まっていると、重苦しいんですよねえ」
こちらを気遣ってか、しきりに話しかけてくれるので、私も苦しい息の下、頑張って返事をいたします。
「はい・・・そうで・・・すね・・・クハッ・・・肩が・・・・・・凝るような・・・感じかも・・・・・・プハッ」
この時気がついたのですが、切開している部分に集中している意識が他に向けられるのか、会話をしていると痛みが多少なりとも紛れるようです。
医は仁術と言いますが、話術でもあるかもしれません。
などと愚にもつかないことを考えながら痛みに耐えること・・・何分だったか憶えてない。長い時間が経ったような気がしますが、10〜20分程度だったかもしれません。とにかく終了。看護師さんに後の処置を任せて、先生は次の診察に向かいました。
看護師さんとの会話
看護師さんは創面に軟膏を塗ってガーゼを当ててくれたのですが、私は、何日か前の新聞に湿潤療法が取り上げられたことを思い出して、ちょっと尋ねてみました。
私「ガーゼを使わずに傷口を湿ったままにしておいた方が早く治るという話を聞いたのですが」
看「え?何それ」
私「ラップ療法とか、うるおい療法とか言われているそうですよ」
看「うーん。先生によって色々やりかたがあるのよねえ」
私「はあ」
看「小さな傷なら良いかもしれないけど、これは手術した傷ですからね。きちんと消毒してガーゼを当てなきゃだめよ」
なんか、一蹴されたようですが、こっちも散々痛い目にあった後で細かく説明する気力などありませんので、おとなしくガーゼを当ててもらいました。私は専門家の意見を尊重する主義です。
会計を済ませる頃には背中の痛みは完全に消えています。化膿した粉瘤は完治、後は背中の切り傷の治療ということでしょう。
とりあえず帰宅後に掃除をして汗をかきました。多少はガーゼも湿ってくれただろうか。
二日目
ガーゼを取り替えてもらいに昨日の皮膚科へ。
「もう膿は出ていませんね。大丈夫でしょう。明後日来て下さい」
あれだけぐいぐい絞り出しといて、まだ膿が残っていてたまるか。
ガーゼを取り替えてから再び絆創膏で固定されましたが、この絆創膏がまた強力で、頭を動かすと首の皮が引きつって。
四日目
ガーゼを取り替えてもらいに皮膚科へ。
「これならシャワーを浴びても良いでしょう。傷口は石鹸で軽く洗って、朝晩ガーゼを取り替えて下さいね。ガーゼ、絆創膏とゲンタシン軟膏を出しときますね。次は五日後に来て下さい」
初日の話では2週間は風呂無しのはずだったので嬉しい。
家に帰って速攻、風呂場へ行きました。何が辛いかって、絆創膏が強力すぎて、皮膚がひきつれて痛いのなんの。剥がすと、まっ赤なミミズ腫れでした。
絆創膏メーカーも手加減して欲しいものです。
鏡で見ると、切り口は横一直線に1.5cm程。昔は十文字にメスを入れていたそうですが、そんなことされたら2週間は風呂に入れないのも当然のような気がします。
言われたとおり石鹸で洗ってシャワーで流して終了。病院で出してもらったゲンタシン軟膏を塗りました。
その次はガーゼですが、家にはサランラップというものがあります。ガーゼよりは少しツルツルしていますね。
私は専門家の意見を尊重する主義ですが、ガーゼもラップも似たようなものでしょう。似ていないかもしれませんが。
ラップを少し大きめに切ってミミズ腫れになっているところまで覆って、周囲を絆創膏で止めました。首も回って快適です。
さてどれぐらいで傷が塞がるか。
五日目
次の朝見ると絆創膏の、ラップとの境目部分に血がこびりついて、どす黒く乾いていました。まだ傷口が塞がってはいないようです。シャツに血が付かないように、絆創膏を二重にしてみよう。
六〜八日目
境目にこびりつく血の量がだんだん減っていきました。色も段々薄くなっていきました。きっと浸出液の色なのでしょう。
九日目
通院日。病院に行く前にガーゼに貼り替えました。私は専門家の意見を尊重する主義なのです。(←事なかれ主義)
「傷は殆ど塞がってますね。今日一日様子を見て、出血などが無ければ明日から普通に入浴してかまいませんよ。異常がなければ通院も終了ということで」
帰宅してシャワーを浴びました。試しに傷口のあたりを少し強く押してみると・・・大丈夫・・・ぷちっと指に薄いピンク色の液体が。
ありゃ、傷口開いた?
仕方がないのでもう一日貼りました。ラップを。
十日目
傷口に触っても何もつかないので、治療は終了。強く押すのは止めました。ラップ貼るのが面倒だし。
追記
8ヶ月後の現在、背中の傷跡は一直線にへこんだままです。完全に傷を消したければ、皮膚ごと切除になるのでしょうが、そのままで支障は無いのでほったらかしです。粉瘤は再発していません。
元旦に指を切った時の話
2006年の元日にお歳暮の新巻鮭をおろしていて、指を切りました。
出刃包丁を研いでから下ろしにかかったんですが、不慣れなもので左人差し指の皮を少しばかり薄くスライス。私はどちらかといえば不器用ですし、一年中新巻鮭をさばいていれば慣れるんでしょうが、そういうわけにもいきません。
ところで鮭の皮ってのは焼いて食べると旨いですが、生だとなかなか切れないですね。
人差し指の傷はイラストのように三角形に切ったのですが、一辺が4mm程度で底辺(爪との境)はつながっています。
当然血がトプトプ出て紅鮭がより赤く染まりました。一応鮭を水洗いしましたが、鉄分が少し増えたかもしれません。
まあ、私は指を切ったりするのは慣れていますので、(←ずぼら)これぐらいじゃ驚きませんし、湿潤(ラップ)療法を試すチャンスなので、内心では少し嬉しかったりしました。
まだ解体途中だったので、生臭い手を何度も洗うのは面倒です。とりあえずめくれた皮を元に戻して、絆創膏を貼ってガムテープを巻いて血が漏れないようにして続行→傷を増やさずに無事終了。いそいそと傷の治療にかかりました。
切り傷の治療
まず魚臭い手を石鹸で洗います。最初水で洗っていましたが傷口が痛いので、ぬるま湯に変えてみると、あまり痛まなくなりました。
外で古釘を踏んだりすると破傷風の心配をしなければいけませんが、破傷風菌は普通に消毒したぐらいでは死なないそうです。空気が嫌いな菌なので、傷が深いと感染しやすいらしい。
『新しい創傷治療』によると、
芽胞を殺そうと思ったら120℃で15分間加熱するか,人間には危なくて使えないような強烈な毒性を有する消毒薬を長時間作用させるしかない。〜中略〜 破傷風の恐れがある傷の局所処置であるが,積極的に外科的デブリードマンするか,大量の水で洗い流すくらいしかない
『新しい創傷治療:破傷風と消毒』
研いだ包丁で鮭を切って破傷風になった話は聞いたことがありませんが、木の枝や虫さされで破傷風になった人もいるそうです。
まあ魚の臭いが消えるぐらい洗えば、いくらなんでも充分でしょう。傷口のあたりは石鹸が傷にしみて痛いので、ぬるま湯をかけっぱなし。
手をくんくん匂って水洗い終了。次はラッピング。
白色ワセリンをラップに塗ると痛みが少ないそうですが、家にはないので馬油で代用します。似たようなもんでしょ。
ここで問題発生。
薄切りの皮膚は文字通り皮一枚で指につながっています。『新しい創傷治療』では“傷口を覆うのは浸出液のみでよい”としていますが、切れた皮膚で蓋をしない方が良いのだろうか?
要するに傷口が乾かないようにラップで覆うわけだから、ラップの代わりに自前の皮で覆っても良いような気もするし・・・
悩んでも分からないので、とりあえず蓋。傷口が湿ってれば良いことにしよう。馬油をちょっと塗ってから、小さく切ったラップを乗せて絆創膏を巻きました。痛みは全然ありません。
6時間後
絆創膏を剥がすと、出血は止まっていました。指を曲げると傷口が開いて、新鮮な赤い中身が見えます。フレッシュです。
1日後
傷口は開きますが、切り口の赤みが薄くなったような。
2〜6日後
傷口は、蓋をした皮膚を通して▲の形に紫色になっていたのですが、紫色が段々小さくなっていきました。あとは観察に飽きたので、よく憶えていません。
7日後
皮の蓋をちょっと擦ってみると、ぽろっと取れて、なんだ皮できてんじゃん。▲の形に少し凹んで上皮化してました。
追記
3ヶ月後の現在、傷跡はほぼ完全に消えました。かなり注意深く見ないと分かりません。
ついでに・・・
私の場合、自宅での湿潤療法によって粉瘤の切開創は10日、指の切り傷は7日で完治したのですが、ガーゼ&消毒と比べてどれぐらい早いのかは、よく分かりませんでした。
理想的には同じような傷を二カ所、ラップとガーゼ&消毒で比較すれば良いのですが、わざわざ指をもう一カ所切って実験するほどの気力はありませんでした。このあたりが専門家と素人の境目かもしれませんが、専門家は自前で人体実験をしているのだろうか。
麻酔無しでの切開ですが、『新しい創傷治療』に治療例があり、なんと局所麻酔して切っていました。何だかうらやましいぞ。
皮膚科と形成外科では考え方が異なるのでしょうか。
参考リンク
『日本皮膚科学会:アテローム(粉瘤)』
『新しい創傷治療:破傷風と消毒』
『新しい創傷治療:膿瘍切開後の処置』
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